Onomichi Temple Path

スタッフ旅行記 ~尾道~ 2019年7月26日



西日本を訪ねる際に必見のルートと言えばやはり京都ー姫路ー広島(宮島)がまさに王道といって間違いないし、もちろんまだ見ていない人には是非とも一度は立ち寄ってほしい場所ばかりですが、もしも既に一度行ったことがある、また時間に余裕があるという人に是非立ち寄って欲しいおすすめスポットがこのルート上に沢山あります。今回はその数あるスポットのうちの一つ、尾道へ行った時のことを紹介したいと思います。
 

「坂の街」、「文学の街」、「映画の街」、「猫の街」など様々なキャッチフレーズを持ち、サイクリングが人気となっている昨今ではしまなみ海道の出発地としても名が知れてきています。

私が駅に降りたってまっさき感じたのは潮の香と同時にその町のレトロ感。山と海に挟まれた横に長く伸びる尾道の街の背骨のように続く長い商店街はなんと1㎞以上続き、日本一長いアーケード街として一つの観光スポットとなっています。そこには比較的新しいお洒落な店と昔から続く懐かしい雰囲気の店が混在しています。お洒落な土産屋やカフェも昔の店を居抜いており商店街の雰囲気はレトロそのもの。近年人気を博している尾道ラーメンの店もいたるところに見かけられます。残念ながら商店街から薬師堂通りを少し入ったところにある元祖尾道ラーメンの「朱華園」は2019年の6月に休業してしまいました。
 

尾道の商店街を散策しながら商店街の東の端まで来たら、今度は山の方へと足を向けて行きます。尾道は「西の小京都」と呼ばれる程に多くのお寺が山の斜面に建てられており、山の斜面伝いに歩いて行く古寺めぐりコースが散策路として整備されています。まずは西の端の海龍寺から始め、次に1400年の歴史を持つと言われる尾道で最も古い寺、浄土寺、そして時宗最古の建築物の西郷寺、延命の名水湧く正念寺。
 

その後古寺巡りコース前半のメイン、西國寺へと向かいます。西國寺は尾道の数ある寺の中でも最大の寺院で、真言宗醍醐派の総本山です。まず始めに現れる仁王門に掛けられている巨大な草履と見事な仁王像に圧倒されます。門をくぐって少し登って右手にある金剛院には重軽天狗という石の天狗の面があります。願い事を念じたあと、軽々持ち上れば願い事が叶うそう。更に登り、最高部には600年以上前に建てられた金堂と三重塔があり、国の重要文化財に指定されています。

La porte de Niomon et les sandales géantes
長い階段を降り、尾道ならではの狭い路地や坂道を歩いていると、猫が日陰でぐったりと休んでいるところに出くわしました。昔から漁港であり商船の寄港として栄えた尾道には魚や様々な食べ物が集まり猫が増えていったとのことですが、尾道を歩いているとそこかしこで猫を見かけます。昔に比べると野良猫の割合が減り、飼い猫が増えて行っているようですが、飼い猫も自由に外を散歩しているようです。
A cat in Onomichi

しかしそういえば外は30度を超える猛暑。猫も暑さにすっかり参ってしまっている姿を見ていると、そろそろちょっとお昼休憩をとる時間。一旦街へ下って腹ごしらえをすることにします。途中、御袖八幡宮という神社の境内を通っているとたまたま門の下で話している会話が耳に入ってきました。どうやら有名な映画の名場面のロケ地だとか。調べてみるとなんと、あの大林宣彦監督の不朽の名作「転校生」で男女が転がり落ちて人格が入れ替わったその場所でした。偶然とはいえどこか感慨深いものがあり、映画のシーンを思い出しながら街へと下りていきました。

昼食は初めからお好み焼きと決めていました。尾道ラーメンももちろん食べたい気もしていたのですが、近年ブームになって急増した尾道ラーメンよりも昔から地元の人々に愛され続けているまさにローカル食の広島焼への欲求が優り、路地を少し入ったところにある地元に人気のお好み焼き屋、「かぎまさ」へ。期待通り、店内は地元民ばかりで賑わい、美人女将が焼く広島風お好み焼きは絶品。気付けばずいぶんゆったりと過ごしてしまい、2杯目のビールをぐっとこらえて古寺巡りへと戻りました。
 
Okonomiyaki時間も限られていたのでちょっと古寺巡りコースをショートカットして、千光寺山ロープウェイ乗り場へ。乗り込む前にすぐ隣にある雰囲気のある鳥居に誘われてすこし寄り道。狭く短い参道を進むと現れるのは尾道最古の神社、艮神社。ここも実は大林宣彦監督の尾道三部作と呼ばれる作品「転校生」「さびしんぼう」と並んで有名な「時をかける少女」の有名な1シーンの舞台となっています。国の天然記念物に指定されているクスノキに囲まれ、どこかスピリチュアルな雰囲気さえ漂わせています。

 Ushitora-jinja Shrine

ロープウェイで千光寺山山頂の千光寺公園まではわずか3分程度。山頂からは海沿いに伸びる尾道の町並み、しまなみ海道の始めの島である向島、遠くに連なるしまなみ海道の島々を見渡すことが出来ます。公園内には2500本の桜が植えられており桜の名所百選に選ばれており、また安東忠雄によってデザインされた尾道市立美術館では尾道ゆかりの作品が展示されています。

展望台からはロープウェイで引き返すこともできますが、ゆっくり文学の小径を歩いて下りていくほうがお勧め。尾道は林芙美子や大林宣彦といった多くの文人や芸術家を輩出しただけでなく、志賀直哉や中村憲吉のように移り住んだ人も多い。文学の小径はそういった尾道にゆかりのある25人の文人の碑が点々と立つ遊歩道で、下りていくと千光寺に辿り着く。

1200年前に創建された千光寺は尾道を代表する寺で千光寺山の中腹の崖にへばりつくように建つ朱塗の本殿と鐘楼は尾道のシンボルにふさわしい佇まいで、そこからの眺めは絶景。本殿を囲む大小さまざまな巨石の中には千光寺の名前の由来となった玉の岩や光を反射すると言われる鏡岩があり、本堂裏手の岩場はくさり山と呼ばれており、鎖を伝って岩のてっぺんまで行き石鎚蔵王権現へお参りするちょっとした修行場もあります。100円払って体験してみましたが片道10分程の短いコースでそれほど体力も必要ありませんでしたが、一部危険な場所もありますので体験したい方は自己責任で。

あとはゆっくり眼下の景色を楽しみながら下って行きます。途中に三重塔や猫の細道といった見所もありました。古寺巡りコースはもう少し続きますが、途中で三重塔と尾道水道が見渡せるカフェ「AOI爽楽」さんでビールを飲んでしまったのでこの日はここでギブアップ。最後に海沿いにある地元民に人気のアイスクリーム屋「からさわ」で疲れた体にアイス最中のご褒美。

もともと一度は来たいと思っていた尾道でしたが、半日くらいで見て回れるだろうくらいに思っていましたがとんでもない。風景あり、歴史あり、グルメありで魅力に満ち溢れ、それでいて観光地化されすぎない素朴さがあり、昭和レトロな雰囲気は懐かしさを覚えさせ、率直な人柄の地元民はどこか親しみを感じさせてくれました。この尾道という街の少し寂れた雰囲気を持ちつつも、尚また訪ねたい気分にさせる不思議な魅力にかつての文人たちも惹き寄せられたのでしょうか。
   


 Our suggested itineraries

 Our day trip with a private guide

 Contact us here